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平成20年度1次試験解答:企業経営理論

設問1

解答:ウ

(ア) ABM(Activity Based Management)は、操業度よりも費消した補助活動を基準にして費用を跡づける間接費の管理技法として用いられる。
→○: 活動基準原価計算(Activity Based Costing)とは、膨張し続ける間接費を管理し、各活動単位に正しく反映させる原価計算法である。この原価計算においては、まず資源の原価が活動に割り当てられ、次にその原価が活動を基にして原価計算対象(製品など)に割り当てられていく。
 活動基準管理(Activity Based Management)とは、活動基準原価計算によって、活動ごとに把握された原価情報などを活用し、コストの視点から活動の管理に重点を置く技法である。活動の分析を通じてプロセスのムダ(非付加価値活動)が明らかにされるので、リエンジニアリングを実施する際に役立つ方法とされている。
  膨らみ続ける間接費を多面的に管理し、その無駄を見つけるための原価管理法としてABC/ABMが考えられたのである。
(イ) DCF(割引キャッシュフロー)法は、いくつかのプロジェクトの価値をキャッシュフローの現在価値に換算して比較評価しようとする場合に用いられる。
→○:DCF(割引キャッシュフロー)法とは、企業(事業、プロジェクト、資産)が将来にわたって生み出すフリーキャッシュフローを推計し、その流列を一定の率(WACC)によって割り引いて算出した現在価値のこと。企業価値やプロジェクト投資などの投資成果の価値評価をする際に使われる。
(ウ) ガントチャートは、コンピュータを活用して、クリティカル・パスを明らかにし、そこに労働力や設備等を重点的に投入して効果的な日程管理をしようとする場合に用いられる。
→×:ガントチャートとは、プロジェクト管理や生産管理などで使われる、作業計画およびスケジュールを横型棒グラフで示した工程管理図のこと。クリティカル・パスを明らかにし、そこに労働力や設備等を重点的に投入して効果的な日程管理をしようとする場合に用いられるのはPERTである。
(工) 線形計画法は、使用量に制限のある2つの資源AとBを用いて、利益を最大化するために製品]とYをどのくらい生産すればよいかを計算する場合に用いられる。
→○:線形計画法は、限りある経営資源をどう配分すれば最大の利益が得られるかという、OR(Operations Research)の代表的な手法である。
(オ) 待ち行列理論は、到着間隔やサービス時間の確率分布をもとに製品の輸送と在庫の管理を計画的に進める場合に用いられる。
→○:待ち行列理論(まちぎょうれつりろん 英訳:Queueing Theory)とは、顧客がサービスを受けるために行列に並ぶような確率的に挙動するシステムの混雑現象を数理モデルを用いて解析することを目的とした理論である。

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設問2

解答:エ

(ア) ある経営資源を保有しない企業は、すでに保有している企業に比べて、その複製が困難であると、コスト上の不利益を被りやすい。
→○:経営資源を保有しない企業は、外部組織から資源を調達する必要がある。さらにその資源が複製困難であるということは、その資源の調達先が限定されているため、調達コストや取引コストは高くなる。
(イ) 企業が特定の経営資源を獲得、開発、活用する能力は、企業の歴史的経緯に依存しているので、先行企業は持続的な競争優位を得やすい。
→○:経営資源の競争優位性は、その企業の歴史的経緯に依存する。そのため、ある事業分野に他社に先駆けて参入した先行企業は競争優位を得やすい。
(ウ) 企業の競争優位と個々の経営資源の関係が不明確になるのは、内部者にとってその経営資源があまりに当然なものであったり、経営資源が個別に分離しにくく一体となって競争優位をつくり出しているからである。
→○:経営資源の多くは暗黙知であり、それがどのようにして企業としての競争優位をつくり出しているかを理解するのは困難である。
(工) 競争優位の源泉である特殊な経営資源の外部からの調達可能性が高く、その調達コストが低いほど、それを調達する企業はコスト上優位になり、競争優位性を長期的に維持できる。
→×:競争優位の源泉である特殊な経営資源の外部からの調達可能性が高く、その調達コストが低いほど、他の企業も経営資源を容易に調達できるので、競争優位性を維持することは困難である。
(オ) 保有する経営資源が希少であることは大事であるが、そのような経営資源は特殊であるため、顧客の価値と合致しないことが起こりやすくなるので、これだけでは競争優位にはつながりにくい。
→○:正しい。

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設問3

解答:イ

 戦略グループとは、同じ業界内で事業展開の仕方に同一性のある、もしくは類似性のある企業群のことである。
 戦略グループは、「製品ラインの幅の広さ」、「垂直的統合の度合」の2つの軸で区分・整理されることが多い。

(イ) いったん戦略グループが形成されると、そのグループから他のグループへの移動は難しくなりがちであるが、グループ内では競争関係は緩和される。
→×:いったん戦略グループが形成されると、そのグループから他のグループへの移動は難しくなりがちである(移動障壁が高まる)。この結果、戦略グループの枠組みは長期にわたり維持されることになりやすく、同じ戦略グループ内における企業間の競争は激しくなっていく

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設問4

解答:ア

(ア) 自社が優位を占める成長分野への他社の参入を防ぐために、積極的に生産の増強を図ったり、広告宣伝などのマーケテイング活動を展開して、市場支配力を強める戦略を追求する。
→○:規模の経済性が働く産業では、積極的に生産の増強を図ったりすることや、製品差別化がきく産業では、広告宣伝などのマーケテイング活動を展開して、ブランド力を高めることで産業障壁を高めることができる。
(イ) 社内の研究開発能力が不十分な場合、外部から技術導入を図ったり、重要な技術部晶を社外から調達せざるをえないので、低価格戦略しかとりえなくなる。
→×:社内の研究開発能力が不十分な場合、外部から技術導入を図ったり、重要な技術部晶を社外から調達せざるをえない。しかし、差別化は可能であり、必ずしも低価格戦略しかとりえなくなるわけではない。
(ウ) 多角化は成長には有効であるが、総花的な戦略を強めて、企業の競争優位を喪失させるので、収益を悪化させることになる。
→×:多角化戦略は成長戦略の一つであり、必ずしも総花的な戦略になるわけでないし、企業の競争優位を喪失させるので、収益を悪化させるものではない。
(工) リストラクチャリングは自社の強みを喪失させるので、既存事業分野の価格競争や技術開発競争が激化しているときには回避しなければならない。
→×:リストラクチャリングは、事業の再構築であり、自社の強みを喪失させるものではない。

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設問5

解答:ウ

(ウ) 大企業からのスピンアウトによるハイテク・ベンチャーが少ないのは、発明者に報いることなく特許がすべて会社の知財になってしまったり、終身雇用慣行のため独立意識が低いからである。
→×:特許については職務発明の規定が改正され発明者に報いるようになっている。

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